自治体DX:離島の観光と地域人材活用を支える2つのデジタルプラットフォーム

海士町は、関係人口を活かした地域づくりを進める中で、来島者管理と地域人材マッチングの業務に課題を抱えていました。SupremeTechは、2つのWebプラットフォームを開発し、手作業に頼っていた運営をデジタル化。自治体 DX を通じて、地域と人をつなぐ新しい仕組みを支援しました。

日本の地方では、観光のあり方が大きく変わりつつあります。小さな町や離島においても、自治体DXに積極的に取り組む先進的な自治体は、デジタル技術を活用して人と地域のつながりを強化し、新たな交流や活力を生み出しながら、持続可能な未来の実現を目指しています。

Overview

日本海に浮かぶある小さな島では、日本の多くの地方地域と同じような課題を抱えていました。若い世代の流出、地元事業者の人手不足、そして年々減少する来訪者数です。

しかし、この島の自治体は課題を前に立ち止まることなく、積極的な取り組みを開始しました。そこで始まったのが、島のアンバサダープログラムです。これは、日本で注目されている「関係人口」という考え方をもとにした取り組みでした。

関係人口とは、その地域に住んでいなくても、継続的な関わりを持ち、地域の未来に貢献したいと考える人々を指します。この島では、アンバサダーが島を訪れ、地元の人たちと働き、交流し、地域の未来づくりに参加できる仕組みを育てていました。

アンバサダーのネットワークが広がるにつれて、2つの大きなニーズが見えてきました。

1つ目は、島への訪問をより効率的に管理する仕組みです。訪問者のスケジュール調整や宿泊手配、アクティビティの管理は依然として手作業で行われており、運営負荷が高まっていました。

2つ目は、地元事業者とスキルを持つ人材をつなぐ仕組みです。事業者側には人材支援のニーズがあり、一方で地域に貢献したいワーカーやコンサルタントも存在していました。しかし、両者を効率的にマッチングするための仕組みが整っていませんでした。

これらの課題を解決するため、自治体はSupremeTechと連携し、2つのWebプラットフォームを構築しました。

  • 1つは、訪問者の旅程管理、施設予約、来訪者管理を一元化する訪問・旅行管理プラットフォームです。
  • もう1つは、地域事業者とワーカー・コンサルタントをつなぐ人材マッチングプラットフォームで、案件掲載から支払いまでをオンラインで管理できる仕組みです。

この取り組みは、地域の現場に根ざした自治体DX (地方自治体のデジタル変革)の事例となりました。

課題

この島はすでに強固なアンバサダーネットワークを構築しており、日本における自治体 DXの先進事例として高い注目を集めていました。さらに、DAO型ガバナンスやメタバース上のコミュニティスペースといった先進的な取り組みにも挑戦していました。

しかし、プログラムの拡大に伴い、運営面の課題が徐々に顕在化していきました。

来島者・旅程管理サイトの課題

旅行計画、宿泊予約、アクティビティのスケジュール調整はすべて手作業で行われており、情報はメールやスプレッドシートに分散していました。そのため、全体を一元的に管理することが困難な状況でした。

また、各来島ごとに交通手配、宿泊、現地での交流、施設訪問などを人手で個別に調整する必要があります。

人材マッチングサイトの課題

地元事業者とワーカー・コンサルタントのマッチングはLINEやSlack上で行われていましたが、明確なワークフローや管理構造が存在していませんでした。

案件の投稿、適切な人材の検索、進捗管理、支払い処理といった一連のプロセスが統合されていません。

プロジェクト推進上の課題

本プロジェクトは当初から、単なるシステム開発にとどまらず、日本全国の自治体が参照可能な自治体 DXのパイロットモデルケースとして位置付けられていました。

また、開発ライフサイクル全体においてAIを活用する方針が採用され、要件定義からコード生成までAIを取り入れることで開発速度の向上を図りました。一方で、AIへの適切なプロンプト設計、出力結果の検証、2つのプラットフォーム間での品質および一貫性の維持といった、これまでにない高度な運用スキルが求められました。

さらに、プロジェクトの途中で、計画段階におけるベンダー間の認識差異によりスコープが拡大し、当初見積もりを超える追加作業が発生しました。予算は固定されており、追加リソースの投入もできない状況の中、スケジュールと品質を維持しながら対応する必要がありました。

最終的な目標は明確でした。従来の手作業プロセスを専用のデジタルプラットフォームへと置き換え、他の自治体にも展開可能な再現性のある自治体 DXモデルを構築することです。その実現のためには、技術力だけでなく、プロジェクトの背景にあるミッションを深く理解できるパートナーが必要でした。この島はSupremeTechを選択しました。

ソリューション

SupremeTechは、2つのWebプラットフォームをゼロから設計・構築しました。それぞれ異なる運営課題に対応しながらも、将来の保守性と拡張性を考慮し、共通の技術基盤の上に実装されています。

来島者・旅程管理サイト

来島者・旅程管理サイトは、ツアー運営者や施設スタッフが島への訪問に関するすべての業務を一元管理できるWebプラットフォームです。来訪者の申請受付から島を離れるまでの一連のプロセスを、統合されたワークフローとして管理できます。

主な機能:

  • 来島リクエストを受け付ける公開フォーム
  • 来訪者のプロフィール、連絡先、訪問履歴を管理するCRM
  • 複数日にわたる旅程を作成できるドラッグ&ドロップ式の旅程ビルダー
  • 施設向けの再利用可能なアクティビティテンプレート管理
  • 地元施設との予約調整、ステータス管理、参加者管理機能
  • 訪問アクティビティで利用する施設・会場の管理機能
  • 参加者を各ツアーに割り当て、参加状況を追跡する機能
  • 旅程を共有できるリンク生成機能
  • 予約更新や新規リクエストを通知するアプリ内通知機能
  • ツアー運営者、施設スタッフ、管理者向けのロールベースアクセス制御

このシステムにより、従来はメールや電話で繰り返し行われていた調整業務が単一のデジタルワークフローに統合され、439名の来訪者と11の地域施設を効率的に管理できるようになりました。

人材マッチングサイト

人材マッチングサイトは、島の事業者とワーカー・コンサルタントをつなぐためのWebプラットフォームです。地元事業者は案件を投稿し、適切な人材を探し、プロジェクトの進行管理から支払いまでを一元的に管理できます。

主な機能:

  • 個人・法人向けワーカー登録機能(専門分野・実績情報を含む)
  • 地元事業者の登録・本人確認
  • 案件投稿、ステータス管理、プロジェクトライフサイクル管理
  • スキルや専門性に基づくワーカー検索・マッチング
  • Stripe Checkoutによるプロジェクト決済、手数料計算、支払い状況管理
  • Stripe Connectによるワーカーのオンボーディングおよび報酬自動支払い
  • ワーカーおよび事業者向け本人確認(eKYC)
  • 経歴や実績を掲載できる公開ワーカープロフィールページ
  • 外部関係者に共有可能な公開プロジェクトページ
  • 作業完了後の承認ワークフロー
  • 取引履歴、支払い状況、Stripe手数料を可視化するダッシュボード

これら2つのプラットフォームにより、従来LINEやSlack上で分散していたコミュニケーションや業務プロセスが、構造化されたデジタルワークフローへと統合されました。その結果、日本における自治体DXのビジョンを、実践可能かつ再現性のある形として実現しました。

技術スタック

両プラットフォームは、パフォーマンス・セキュリティ・スケーラビリティを考慮した共通アーキテクチャ上に構築されています。

  • フロントエンド:Next.js(React Server Components)
  • バックエンド:Next.js API Routes + Supabase(PostgreSQL)
  • 認証・セキュリティ:Supabase Auth + Row Level Security(RLS)
  • 決済:Stripe Checkout + Stripe Connect
  • ホスティング:Vercel(Preview Deployment対応)

成果

2か月という短期間で、2つの実運用レベルのプラットフォームをリリースできたことは、大きな成果でした。しかし、それ以上に重要なのは、この島が今後の成長を支える拡張性の高い運営基盤を構築できたことです。

業務効率の向上

これまでスプレッドシート、メッセージングアプリ、手作業による調整に分散していた業務プロセスは、2つのプラットフォームへと集約されました。

来島者・旅程管理サイトでは、来訪者受付、旅程作成、施設予約調整、参加者管理までを単一のデジタルワークフローで運用できるようになりました。

人材マッチングサイトでは、案件マッチング、決済処理、ワーカーへの報酬支払いまでがデジタル化され、手作業による進捗管理や銀行振込対応が不要になりました。

数字で見る成果

  • 439名の来訪者情報を単一のデジタルCRMで一元管理
  • 11の地域事業者・施設を統合管理し、個別の予約調整業務を削減
  • 2か月の開発期間で、2つのプラットフォームにまたがる20以上の主要機能を提供
  • 各プラットフォームごとに10〜11件の詳細機能仕様を策定
  • PRD、アーキテクチャ設計書、実装計画書を含む開発ドキュメントを整備

AI活用による開発効果

本プロジェクトでは、仕様定義、モックアップ分析、コード生成、ドキュメント作成まで、開発ライフサイクル全体にわたってAIを活用しました。その結果、限られた開発体制でも短期間で広範囲なスコープに対応でき、今後のプロジェクトにも応用可能なコスト効率の高い開発モデルを実現しました。

また、当初見積もりを超えるスコープ拡大が発生した中でも、一貫した開発プロセスを維持することで、品質を損なうことなくプロジェクトを完遂することができました。

リリース時点で、クライアントが手にしたのは単なる2つの新しいプラットフォームではありませんでした。それは、日本全国の自治体が参考にし、学び、導入を検討できる自治体DXの実践的なモデルケースでした。

このプロジェクトから得られた知見

このプロジェクトは、単なるソフトウェア開発案件ではありませんでした。テクノロジーは、明確なミッションに基づいて設計されたときにこそ、その価値を最大限に発揮することを改めて実感したプロジェクトでした。

固定予算プロジェクトでは、スコープの明確化が成功の鍵となる

本プロジェクトでは、計画段階におけるベンダー間の認識差異により、当初見積もりを超えるスコープ追加が発生しました。しかし、予算やリソースを増やすことはできませんでした。

プロジェクトを成功に導くうえで重要だったのは、初期段階で可能な限りスコープを明確化すること、そして状況変化に柔軟に対応しながらもスケジュールを維持することでした。

固定スコープ型のプロジェクトでは、関係者間の認識を早期に合わせることが、すべての土台となります。

AI活用型開発は実運用レベルでも十分に機能する

本プロジェクトは、SupremeTechにとってもAI活用を大きく推進した案件の一つでした。仕様定義からコード生成、ドキュメント作成に至るまで、開発ライフサイクル全体でAIを活用しました。その一方で、アーキテクチャ設計、業務ロジック、セキュリティ、UXといった重要な意思決定領域では、人による判断とレビューを継続的に実施しました。その結果、適切な開発プロセスとガバナンスを組み合わせることで、品質を維持しながら開発スピードを向上できることが実証されました。

ミッションへの理解が、より良いプロダクトを生み出す

クライアントが目指していたのは、単なるソフトウェアの開発ではありませんでした。地域の人々を中心とした、新しい自治体DXのモデルを構築することでした。

SupremeTechは、その背景にある目的や文脈を深く理解し、それを2つのプラットフォームとして具体化しました。そのことが、このパートナーシップの成功につながったと考えています。

単なるベンダーではなく戦略的パートナーであるということは、正しいコードを書くことだけではなく、適切な問いを投げかけることでもあります。

今後の展望

この島のデジタル変革は、現在も進化を続けています。SupremeTechは、今後の成長フェーズにおいても継続的な支援を行っています。

今後は、以下の取り組みを予定しています。

決済基盤の刷新

両プラットフォームにおける決済機能のさらなる安定性と柔軟性の向上を目指し、決済基盤全体の再設計を進めています。

新機能の開発

来島者・旅程管理サイトおよび人材マッチングサイトの機能拡張を進め、より多様で高度な利用シナリオに対応できるプラットフォームへと発展させていきます。

プラットフォーム全体の継続的改善

実際の利用データやクライアントチーム、コミュニティからのフィードバックをもとに、既存機能の改善とユーザー体験の向上を継続的に進めていきます。

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